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こんな「いつか」が見たかった

はい、今日は刹那の誕生日です!
なのでまたまた小説を…………
………めっちゃ長くなりました…なぜだ…
そんなんでよろしければ、続きのほうからどうぞ。
それでは…



        Happy Birthday Setsuna !!


「……」
ふっと眼を開けた刹那は、一瞬自分がどこにいるのか思い出せなかった。
視界に飛び込んでくる自分の膝頭と、背中にあたる金属の壁の感触。
一、二度頭を振って顔を上げると、目の前には星星の散る漆黒の宙。
数秒間天然のプラネタリウムをぼへらっと眺めたのち、自分は展望室にいるのだということを
ようやく思いだした。
そうだ。ダブルオーガンダムの整備が終わった時点で限界が迫り、ここのベンチで思い切って
仮眠をとることにしたんだった。
息を吐き出して壁にもたれかかると、また瞼が落ちてくる。しばらく睡魔と格闘してみるが、
気を抜くとすぐに意識が飛んでいく。このままでは、何かがあったとき非常にまずい。
しかたがない。眠い眼を瞬かせながらベンチから立ち上がる。
寝不足のまま何かあるよりはずっとマシだと自分に言い聞かせ、思考のまとまらない頭を
抑えながら、刹那はよろよろと自室を目指した。

刹那を探してきてくれ。
ティエリアにそう頼まれたのは、もう30分以上も前。
沙慈と赤ハロは、刹那の部屋の前に立っていた。
ブリッジにはいない。ブリーフィングルームにもトレーニングルームにもいない。
第1コンテナは真っ先に探したし、念のため第3コンテナも覗いてみたがいなかった。
ダブルオーのところにもオーライザーのところにもいないのならば、あとはここぐらいだろう。
沙慈は一度深呼吸をする。
よく考えたら(頼まれたとはいえ)、自分の足で彼の部屋を訪ねるのはこれが初めてだ。
ずっと、どうにもならない溝のようなものがあったから、意識的に避けていた。
まともに話せるようになってからも、ここに来ようとは思わなかった。なぜかはわからないが。
だから、嫌でも緊張する。
気持ちを落ち着かせ、小脇の赤ハロを抱え直す。そうして息を吸い、中にいるかはわからない
部屋の主に、やや躊躇いがちに声をかけた。
「刹那…いる?」
返事はない。もう一度。
「刹那、いないの?」
反応無し。もう一度。
「刹那? おーい」
無言で無音。
「…いないのかな?」
覗いていない第2コンテナにでも行っているのだろうか、それとも他の場所か、またはどこかで
すれ違いになった?
困ったことになった。もしかしたらいるかもしれないので確認したいのだが、あいにくロックが
かかっている。かかってなかったとしても、勝手に入ったら不法侵入だ。
「どうしよう…」
一度ティエリアに報告するべきか、このまま別の場所に探しに行くべきか?
判断がつかず、沙慈はその場で途方に暮れる。
ふと、赤ハロが身じろぎ(沙慈にはそう見えた)し、ぴょいっと沙慈の腕から飛び出した。
微重力空間で耳をパタパタと動かし、部屋のドアの開閉パネルに向き合う。
「ハロ? なにやってるの?」
軽い電子音が鳴るだけで、赤ハロからの返答はない。いまいちよくわからないまま、
沙慈はとりあえず成り行きを見守る。
数十秒後、ひときわ高い電子音と共に、赤ハロが誇らしげに沙慈を振り向いた。
『ロック解除! ロック解除!』
「え?」
なにを言われたのか、すぐにはわからなかった。赤ハロの言葉を反芻しようとする沙慈の
眼前で、鋼鉄製のドアがスライドする。
「へ !?」
眼を剥き、開いたドアと耳をパタパタ動かす赤ハロを交互に見、そして沙慈は理解する。
どうやったのかはわからない。だがこれはわかる。
「……ぇええええ!?」
赤ハロは刹那の部屋にかかっていたドアロックを、勝手に外してしまったのだ。
こんなことしていいんだろうか。いや、絶対よくない。
眉間にしわを寄せて眦を吊り上げ、怒りのオーラをかもし出す無言の刹那。
そんな彼の姿が容易に想像できてしまい、沙慈は頭を抱えたくなった。
そんな沙慈の心情など露知らず、赤ハロは部屋の中へと飛び込む。
「あ、ハロ!」
二、三度部屋の中を跳ね、赤ハロはもはや相棒といっても差し支えなくなった青年を呼んだ。
『刹那発見! 刹那発見!』
赤ハロは部屋から出てくる気はないらしく、重力のある部屋の中で跳ねている。
回収のためには部屋に入るしかない。ためらったが、沙慈はそろそろと足を踏み入れた。
照明が落ちていて、光源はドアからはいる通路の明かりだけ。
沙慈が入るとドアが閉まり、完全に真っ暗になる。部屋の様子が分からない。
「刹那…どこ?」
返答無し。沙慈は手探りで照明のスイッチを探した。
一応ひとこと断りを入れてから明かりをつけ、自室と同じ作りの室内を見まわす。
いた。
ベッドに広がる緩いウェーブのかかった髪。
青系で統一されたCBの制服。その上からでも細身とわかる体格。
右手を腹部に置いて、残りの四肢をベッドの上に投げ出して、刹那はくーっと熟睡していた。

   ◇   ◇   ◇

「…おい、お前、今なんつった」
「俺の誕生日など祝う必要があるのかと言った」
壁により掛かり、同じ言葉を繰り返した刹那に、ロックオンは渋面をつくる。
「…本気で言ってんのか」
「俺は自分に祝われる資格があるとは思えない」
ロックオンは応えない。ややあり、ようやく口を開いた。
「…そんなさみしいこと言うなよ」
「事実を言っただけだ……ロックオン?」
自分よりもずっと上にある顔を見上げ、刹那は眉根を寄せた。
なにか、痛みを堪えるような顔。なぜ、ロックオンがそんな顔をする?
「そんなこと言うなって…お前に祝われる資格がないなら、俺だってそうだ。今までの武力介入
で大勢の命を奪ってる。お前がなんでそんなこと言い出すのかはしらねえが…お前だけの
ことじゃない」
俺が言っているのは武力介入のことじゃないんだが。だが言うとあとあと面倒なので、ここは
話をあわせておいたほうが無難だろう。もともと、誰にも言うつもりはない。
「だが、俺も同じなのは事実だ」
「まあな…けどな、お前を祝ってくれてるやつらはみんな、お前が今、こうしてここにいることを
喜んでくれてる」
「…なんの関係がある?」
「大ありだ。誕生日を祝われる資格がないってことは、生まれてきたことが許されないって、
そう言ってるのと同じ事だ」
「だからなんだ?」
「周りのやつが祝福してくれるってことは、少なくともお前は、生まれてきたことを許されてる」
「…おめでとうと言われただけで、なぜそうなる?」
「お前なあ…」

いいか、刹那――― …

   ◇   ◇   ◇

最近では随分と聞き慣れた声に呼ばれ、刹那はゆっくりと瞼を開いた。
「あ、起きた」
『オハヨ! オハヨ!』
「………沙慈か…」
体を起こしてベッドに座り、ぼおっとしながら眼をこする。あれからどれくらい寝てただろう。
「沙慈…今何時だ?」
「え? えーっと、」
『グリニッジ標準時、午後6時45分、午後6時45分』
「だって」
耳をパタパタと動かす赤ハロに、刹那は思わず顔をしかめた。
確か部屋に戻ってベッドに倒れ込んだのが午後2時をまわったくらいのはずだ。
つまり5時間近く眠っていたことになる。そこまで眠かったのか。だが眠いにも程がある。
刹那の表情を不機嫌ととったのか、赤ハロを両手に抱えた沙慈はとにかく不法侵入の一件を
謝罪しなければと、やや引きつりながら声をかけた。
「あ、あの、ごめん。勝手に入って」
眠い眼を瞬かせた刹那がきょとんと沙慈を見上げる。ごめん? 勝手に入った?
……ああ。
「いや、いい。むしろ助かった」
沙慈が起こしてくれなければ深夜、極端な話、明日の朝まで寝倒していたかもしれない。
事実、彼が部屋に入ってきたことにまったく気付かないほど、自分は寝入っていたのだ。
仮眠のつもりだったのにな…。
そう内心でひとりごちる。それに。
「どうせ赤ハロが勝手にロックを解除したんだろ?」
でなければ常識人の沙慈が勝手に入ってくる状況は想像しがたい。むしろありえない。
「……あんなことできるなんて知らなかったよ……」
がくっと肩を落とす沙慈を眺めながら、ふあ、とあくびをひとつかみ殺す。
「それで、何かあったのか?」
お前が俺の部屋に来るなんて。
あ、と声をあげ、沙慈が顔を上げる。
「さんざん刹那の端末を呼び出しても応答がないから探してきてくれって、ティエリアさんに
頼まれたんだ」
「ティエリアに?」
枕元に置いてあった端末を拾い上げて確認する。なるほど確かに、ティエリアからの
連絡記録が端末に残っていた。それも、けっこう大量に。
ベッドから立ち上がりながら、刹那は手櫛で髪を軽くすいた。思い切り眠れたおかげで、
頭ははっきりしている。
「急ぎの用件か?」
「急ぎってわけじゃないけど…とにかく見つけ次第、食堂に連れてくるようにって」
「食堂?」
沙慈が口にした場所に、刹那はわずかに眉根を寄せた。ブリーフィングルームじゃないのか?
そう言うと、沙慈はくすりと面白そうに笑った。
「行けばわかるよ」
『オタノシミ! オタノシミ!』
ひとりと一体の言葉の意味がわからず、刹那は思わず首を傾げた。

通路の移動用リフトにつかまり、沙慈、赤ハロ、刹那の一行は、ゆっくりと食堂へ向かう。
それにしてもと、沙慈は肩越しに刹那を振り返った。
「珍しいね、君がこんな時間に部屋で寝こけるなんて」
「そうか?」
沙慈の表情が不安げに曇る。
「うん…どこか、具合でも悪いの?」
『そもそも刹那は普段から無茶をすることが多い。自分の身体のことをまったく考えとらん!』
だから見ていられないだの、余計心配になるだの、イアンから愚痴をこぼされたことがある。
オーライザーに乗ってともに戦場に出てみて、イアンの言ったことがよくわかった。
確かに刹那は無茶や無理をすることが多いような気がする。
その無茶が溜まりに溜まって、体調を崩したんじゃないだろうか。
でなければあの刹那が部屋で寝こねる状況は想像しがたい。失礼だが、むしろありえない。
一度考え出すと思考がマイナス方向に転がっていく。そんな沙慈に、刹那は「いや」と
首を横に振った。
「体調は問題ない。寝不足だっただけだ」
「え、寝不足?」
ああ、と今度は首肯する。
夕べ、夢見が悪くて真夜中に飛び起きた。
その夢が頭から離れず、結局その後一睡もできなかった。おかげで酷い寝不足だ。
「睡眠時間は…たぶん2時間程度だったと思う」
「……2時間じゃね」
あはは、と苦笑しながら、沙慈は合点がいった。なるほど、妙に納得してしまう理由だ。
姉やルイスと別れたあの頃、沙慈にも何度かあったことだ。
原因、遠因はCBにあるのだが…同じ経験をしている分、他人事とは思えない。
それにしても…あの刹那がそうなる夢なんて…。
「どんな夢だったの?」
単なる興味だった。だが、刹那はなにも言わずに俯き、やがてリフトの継ぎ目で
立ち止まってしまう。
「刹那…?」
リフトを停止させ、沙慈は刹那のほうへ歩み寄った。
黙ったまま、刹那は右手を握り込む。
「……昔犯した、罪の夢だ」
「つみ…?」
その小さな呟きに応えず、刹那は右手に力を込めた。
夢の中で、自分はまた両親を殺した。
幼い自分を誘拐し、洗脳した男の言葉を信じて。
引き金を引いた。何の躊躇もなく。
そのことに、神に選ばれたことに、喜びすら感じた。
消して消えない、自らの手で犯した、最大の大罪。
「…あの日のことを夢に見るたび、いつも思う」
仲間に、ニールに“変わる”と誓ったのは嘘ではない。
だが――それはあくまで理性の部分であって、感情にごまかしはきかない。
「もしも」を繰り返しても、なにもならないのはわかっている。だが、それでも。
考えてしまう。
“もしも”――初めから自分が、「ソラン・イブラヒム」という存在がいなかったら?
ゲリラとして殺してきた人々はさすがにわからない。
マイスターとして戦ってきた相手は、自分の位置にあたるマイスターが命を奪っていただろう。
だが…だが少なくとも両親は、死なずにすんだのではなかっただろうか?
誰にも、ニールやティエリア、マリナにも言っていない、常に心のどこかに潜んでいる感情。
今さら答えを求めたところで、なにかが変わるわけではない。
それでも、ずっと、CBに入る前から抱えている、疑問という名の感情。
自分を産み、愛し、慈しんでくれた人たちを、この手で殺した。
自分という人間が存在したことで、あんな惨劇が起こったというのなら――――
「…俺は…生まれてきてよかったのか…?」

「…せつな…?」
我に返って顔を上げれば、愕然とした沙慈が言葉を失っている。
しまった、と刹那は自分の迂闊さに胸中で舌打ちした。
「刹那、あの」
「すまない。余計なことを言った。忘れてくれ」
うろたえる沙慈の言葉を遮り、「行こう」と促して先を進む。
沙慈はなおなにかを言い募ろうとしたが、ぐっと口をつぐんで刹那の背中を追った。
追ってくる気配に少しだけ視線を向け、刹那は前を向く。どうしてあんな事を口走ったのだろう。
仲間の誰かならまだしも、自分たちの武力介入のせいで巻き込んでしまった沙慈に。
思ったよりも夢に影響されて、どこかおかしくなっているのだろうか?
思考を巡らせ、やがてひとつ頭を振る。今さら言っても詮ないことだ。
沙慈に気付かれないよう息を吐き出し、刹那は意識を切り替えた。


夢。そういえば沙慈に起こされる直前まで見ていた夢。
あれは確か、17歳の誕生日の記憶だったか。随分と珍しい夢を見たものだ。
ニールになにかを言われたのだが、あの言葉の続きが思い出せない。
あいつは、なんて言ってたんだ―――?


食堂のドアの前に立ち、刹那は沙慈を振り返った。
「しつこいが、なぜ食堂なんだ?」
沙慈の返答はなかった。俯き、どこか深刻そうになにかを考え込んでいる。
「沙慈?」
再度呼ばれたところで、沙慈はようやく顔を上げた。
「刹那」
“生まれてきてよかったのか?”
先ほど投げかけられた刹那の言葉が、どうしても頭から離れない。
なぜ彼が自分のことをそう思っているかはわからないし、彼の問いに対する答えを
沙慈は持っていない。
だが―― これだけは言える。
「たとえ君が君自身のことをどう思っていても、君が今ここにいることを祝福してくれる人たちは
沢山いるよ」
「?」
「それを、忘れないで」
突然の言葉の意味を聞き返す間もなく、沙慈は食堂のドアを開ける。
鋼鉄製のドアがスライドした瞬間、賑やかな空気が中からあふれ出たのがわかった。
「あ、やあっと来たわね刹那!」
「遅かったな、沙慈・クロスロード。どこにいたんだ?」
「部屋で寝てました。それもぐっすり」
『グッスリ! グッスリ!』
「それじゃあ主役も来たことだし、みんな今日はぱーっとやりましょーっ!」
「スメラギさん、まだ早いですよ!」
アルコール片手のスメラギはもう軽く酔っているらしい。彼女のテンションの高さが
それを物語っている。
そんなスメラギを抑えようとするアレルヤ、彼に手を貸すラッセ。
ミレイナ、フェルト、リンダの傍にはマリーの姿。イアンのジョッキにビールをついでいるライル。
トレミーのメンバーが全員集まっている。当たり前のように中に入ってティエリアに
報告をいれる沙慈の後ろで、状況判断のできない刹那は思考が停止していた。
「なにを固まっている」
肩を叩かれ、緩慢な動作で首をめぐらせる。
「今日の主役がいつまでもドアの所に突っ立っていてどうするんだ?」
まさに「大成功」、あるいは「してやったり」といった風情のティエリアに刹那は眼で訴えた。
頼む、この状況を説明してくれ。
ティエリアはそれを正確に読みとったが、「ほら、中に入れ」と刹那の背中を押す。
うながされ、呆然としながら食堂に入った刹那は、改めて中を見渡した。
「……………………宴会か?」
ぽつりとこぼした呟きに虚をつかれ、やがてティエリアはやれやれと苦笑しながら
肩をすくめる。
「まったく…今日が何の日か覚えてないのか?」
「…何の日だ?」
ティエリアが呼んでいると沙慈に起こされ、ブリーフィングルームかと思えば食堂に
来いと言われ、なぜ食堂かと問えば「行けばわかる」とだけ伝えられ、来てみればクルー
一同が揃っていてなぜか宴会ムード。
もうなにがなんだかわからない。
「それじゃみんな、いい?」
スメラギの声に、刹那は再びクルーたちに意識を戻す。
「せぇの!」とスメラギが音頭をとり、その場のほぼ全員が声を揃えた。

「ハッピーバースデー刹那――――っ!!」

「おめでとうですーっ!」
どこから調達してきたのか、ミレイナがクラッカーを鳴らす。
目の前で起こったことに、刹那の思考回路は今度こそ完全に停止した。
今、なんと言われた? ハッピーバースデー………誕生日おめでとう………誕生日…?
回らない頭でなんとかそこまで考え、刹那は横で苦笑しているティエリアを呼ぶ。
「ティエリア…今日は何年の何月何日だ?」
「西暦2313年の4月7日だな」
「4月…7日…」
そうか、もうそんな時期なのか。いや、この日は確かに自分の誕生日だが。
あっけにとられる刹那をよそに、仲間たちはもう完全に宴会モードに突入している。
刹那はもう一度ティエリアに眼で訴えた。頼むから、納得のいく説明をしてくれ。
混乱と、わずかに焦りも見せる刹那に、ティエリアは笑いをかみ殺しながらようやく
ことの次第を話した。
言いだしたのはミレイナだった。どこで聞いたのかは知らないが、4月7日が刹那の誕生日だと
知って今日のこの「ミッションプラン」をスメラギに進言したらしい。それが約一週間前の話だ。
そのスメラギが「希望制の極秘ミッション」として刹那意外のメンバーに連絡を入れ、
準備のための指示も、すべてスメラギが出していた。
「最近ようやく落ち着いてきたからな。ねぎらいも兼ねて、宴会がてら君の誕生日を盛大に
祝おう、というわけだ」
刹那は大きく息を吐き出す。なるほど、状況はよくわかった。
「…迷惑だったか?」
「なに?」
控えめにかけられた言葉に、ティエリアを振り返る。
「ダブルオーライザーが完成して以来、君にはなにかと負担をかけていたからな…君のために
なにかを、と思ったんだが…」
ティエリアは刹那から視線を外し、どこか申し訳なさそうに言葉を繋ぐ。ああ、そうか。
彼なりに、みんななりに、自分のことを思ってのことだったのか。
口元に笑みを乗せて、刹那は首を横に振った。
「少し…いや、だいぶ驚かされたが、迷惑だとは思っていない」
「そうか…ならよかった」
ティエリアがほっと破顔したのとほぼ同時に、盛り上がる面々からスメラギがふたりのほうに
よってくる。
「せつなぁ~、誕生日おめでとう!」
軽く酔っていたスメラギはもう完全にできあがっているらしい。赤い顔で笑いながら刹那の肩を
ばしばし叩いてくる。そのハイテンションぶりに、刹那は思わずあとずさりしそうになった。
「あんたももう22なのね~、組織に来たころはあんなに小さかった刹那がこんなに
大きくなっちゃってまあ!」
「スメラギさん、刹那引いてますよ!」
お姉さん嬉しいわ~、と刹那にからんでくるスメラギを、アレルヤがどうにか取り押さえた。
「アレルヤ、ラッセはどうした?」
ティエリアの問いに、アレルヤは視線だけでラッセを示す。
顔が真っ赤になったラッセは、食堂の真ん中でなぜか制服を脱いで鍛えられた
筋肉美を披露していた。
「スメラギさんに飲まされて…」
「……手伝うか?」
見かねた刹那がスメラギの抑え役を手伝おうとするが、アレルヤはそれを断った。
「大丈夫だよ。今日の主役に仕事させるわけにはいかないしね」
いざとなったらロックオンに手伝い要請するから。
「誕生日おめでとう、刹那。もう22歳か…」
そこから先の言葉は音にならなかったが、彼のオッドアイは「あんなに小さかった刹那が
こんなに大きくなって…」と語っていた。
俺は誰から見てもそう思われるのか? そんなことを考えながら賑やかな輪に戻っていく
アレルヤとスメラギを見送っていると、突然両肩に重さがのしかかる。
「おめでとうな刹那、楽しんどるか?」
「もう22か、おめでとさん!」
なんの前触れもなく、イアンとライルが両肩に腕をまわしてきた。成人男性二人分の重量に、
刹那は思わずよろける。
「ロックオン、イアンも、酒臭いぞ…」
「そりゃ飲んでるからな」
あっさり肯定するライルに、大笑いで返すイアン。このふたりも完全にできあがっているらしい。
アレルヤ、ロックオンに手伝いを要請するのは無理だ。
「しっかしなあ、お前、こんなにでかくなって」
「どっかの通路の影で兄さん泣きながら喜んでるぞー、きっと」
両サイドから抑えつけられるように頭をなでられ、せっかく伸びた背が縮むんじゃないかと
刹那は一瞬思った。
スメラギに呼ばれ、ライルとイアンも賑やかな輪に戻っていく。
そのふたりの、いや、ライルの背を、刹那はじっと見つめた。
刹那のその様子にティエリアは怪訝そうに眉根を寄せた。
「どうした?」
声をかけると、刹那は視線を外さないまま、いや、と返す。
「ロックオンまで来ていることを、少し意外に思った」
軽く目を瞠り、ティエリアは納得する。
「…そうか…」
実際ティエリアも、ライルは不参加だろうと思った。
やむを得ない状況だった、そうするしかなかったとはいえ、刹那は、彼にとってなににも
代えられない存在を、彼から奪うことになった。
あのことがある分、ライルの参加は難しいだろうと思っていたが、意外にも彼は進んで参加の
意思表明をした。そのことにティエリアはもちろん、アレルヤ、沙慈、スメラギもずいぶんと
驚かされた。
何を思って彼が参加を決意したか、ティエリアにはわからない。だが。
「彼は彼なりに、思うところがあったんだろう」
「…そうか」
ふと、賑やかな輪の中からよろよろと誰かが外れた。沙慈だ。
「た、助かった…」
『沙慈ヨレヨレ。沙慈ヨレヨレ』
ふらふらしながら刹那とティエリアの傍により、ようやくほっと息をつく。
なにがあったか聞くと、はあ、とため息をついた。
「酔ったラッセさんに絡まれて…」
一杯だけつきあえ、といわれて飲んだら、二杯も三杯も飲まされそうになった。
「それでからがら逃げてきたんだ…」
「…………災難だったな」
「ラッセは脱ぎ癖の上に絡み癖まであるのか?」
真顔で思案するティエリアにどうだろうな、と返すと、隣から沙慈に呼ばれる。
「なんだ?」
「…さっき、僕の言ったこと、わかったかな?」
少し控えめなその言葉にわずかに目を瞠り、そして眼を細め、ああ、と返した。
「そっか」
その答えで、とりあえず沙慈には十分だった。
それじゃあ改めて、と、沙慈は、ティエリアは、祝いの言葉を口にする。
「刹那、誕生日おめでとう」
「おめでとう、刹那」
“君が今ここにいることを祝福してくれる人たちは沢山いるよ”
祝いの言葉をかけられ、沙慈の言葉どうりだなと思った。
そしてそれが、こんなにも嬉しいことだと知った。
『もしも自分がいなければ』
そう考えてしまうのは、もうどうしようもない。もしかしたら一生、心のどこかに抱えたまま
生きていくことになる。
『生まれてきてよかったのか』 『生まれてきたことが許されるのか』
それは自分にもわからない。別に死にたいわけじゃないが、そう考えてしまうのも、実のところ
やはりどうしようもない。けれど――
目の前のふたりから、仲間たちからかけられる、「おめでとう」の言葉。
それを「嬉しい」と感じるのも、また事実。
生まれてきてよかったのか。そんなことわからないけれど。
それでも―― 今は、みんなからの祝福の言葉に、返したいと思った。
だから刹那はティエリアに、沙慈に、今の自分にできる精一杯の笑顔で返した。
5年前の4月7日、ついぞ口にすることのなかった、感謝の想いを。

「…ありがとう」







ふと、あの夢の続きを思いだした。
そうだったなと、懐かしむように笑みをつくる。

『いいか、刹那。“誕生日おめでとう”って言葉はな』

ニール。
あの時はわからなかった、お前が言った言葉の意味が。

今、ようやくわかった気がするよ――――。






『“生まれてきてくれてありがとう”って意味なんだよ』






  【そして感謝の言葉を交わしましょう】







あとがき
長くなりましたが…いかがだったでしょうか。
今回は一番最後に来たタイトルはD●レの原作のひとつをすこし変えてお借りしました。
「刹那は自分の幸せないがしろにしすぎ!」という感情からできた話です。
たぶんご両親のことは酷いキズになってて…一生抱えていくんだろうなと…。
時間がないうえに少々眠気に襲われ…必至にやりました。
タイトルの「感謝」は、「誕生日おめでとう」とそれに返す「ありがとう」です。
伝わったかな~…無理かな…。やりきった感はありますが…。
ライルの立ち位置はギリギリまで悩んでいましたが、最終回で躊躇いもなく助けに来てくれた
ので、「多少のわだかまりはあるけどまあ酔った勢いでお祝いは許されるだろ!」ぐらいは
彼も考えてくれるかな、と。イアンはそれに気付いてひそかにつき合ってくれました。
ティエリアの件は…もう、スルーしてください…
「こんな時間を見てみたかった」というわたくしめの願望でございます。

ここまでながながと、ありがとうございました。

2009/04/07 23:47 |おりだぶ小説COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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