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星に願いを

七月七日、七夕です。
なのにあいにくの天気…織姫と彦星は逢えたんでしょうか?

えー、残念ながら当初予定したものは挫折しました…沙慈は出ません…。
その代わり、と言ってはなんですが、公式外伝の機体が機体名称のみ出ます。
一応把握している範囲での簡単な説明はあとがきにありますので、
公式外伝介入済みの方、介入してないけどばっちこーいな方、
私のつたない文章でもいいよ、と言ってくれる心の広い方は続きのほうからどうぞ。

なお、ラストはギャグオチ、ちょっとニールが災難? かもしれません。

笹の葉さらさら のきばにゆれる
お星様きらきら 金銀砂子



【七夕】



ダイニングルームで、刹那は長身の男を見上げた。
「『タナバタ』? なんだそれは」
「毎年この時期にある日本の風習なんだと」
うろんげな刹那に、ロックオンはからりと答えた。
彼はミッションの合間にできた休暇に、ちょくちょく刹那の隠れ家になっている
東京のマンションにやってくる。
こうやって押し掛けなければ、刹那はまともな生活をするのかも怪しいからだ。
刹那からしてみれば、はなはだ迷惑な話であるのだが。
「ここに来る途中のショッピングモールでこれ配ってたんだ」
そう言ってひらめかせたのは、長方形の紙。
「これは、えーと『タンザク』って言って、これに願い事を書いて『ササ』っていう
植物の枝に括って、願い事が叶うように祈るんだと」
「祈る…?」
ぴくりと、不機嫌丸出しな刹那の眉がわずかに上がる。
「そっ」
それに気付かず、刹那の分もあるぞー、とロックオンは刹那の手に少年の愛機、
エクシアと同じ青色の紙を押しつけた。
ロックオンが自分の分と手にしているのは、彼のデュナメスと同じモスグリーン
の紙。どちらの紙にも、頭のほうに糸がついている。
「タンザク配ってたところにササもあったから、書いて吊してこようぜ」
日本の風習って面白いよなー。お前はなんて書く?
にこやかに笑いながら(どこから出したのか)ペンを渡すロックオンの
見ている前で、刹那はじっと紙を睨みつける。
そして。
「くだらない」
低い、怒りをはらんだような低い声で呟き、刹那は手のなかの紙を
押しつけるように突き返した。
突き返された紙を思わず受け取り、ロックオンはむっとしたように抗議の
声をあげる。しかしそれは、続く刹那の言葉に遮られた。
「おいおい、刹那。ひとがせっかく…」
「なにに対して祈るんだ? 神にか? 祈ってなんになる」
そんなもの無意味だ。祈りなんてものは、なんの意味も持たない。
願いがあるなら己の手で叶えるべきだ。神に祈ったところで、叶うわけがない。
神なんて、所詮脆弱で身勝手な人間が勝手に創り出したまやかしだ。
「この世界に、神なんていない!」
あっけにとられるロックオンと目を合わせないまま一気に吐き捨て、そのまま刹那は
俯いてしまった。
「………あー…」
しまった。
刹那は「神」や「祈り」に、酷く敏感に反応する。肌や瞳の色素、顔立ちからして
宗教色の強い中東出身者なのはわかっているのだが、刹那の反応は普通の中東
出身者のそれではない。
刹那は、神を否定する。
本来はその逆、宗教を否定することに反応するのだが、刹那はまるで正反対なのだ。
刹那は神に祈らない。「祈り」という行為すらも否定する。
刹那がそこまで頑なに「神」を否定する理由をロックオンは知らない。
だが刹那の過去に、そうさせるだけのものがあるのだろうということだけはわかる。
マイスターの個人情報は、太陽炉と並ぶレベル7のトップシークレット。
いったい何があったのか、訊きたくても訊くことはできない。
なにより、秘匿義務があろうと無かろうと、触れてはいけないことのような気がした。

刹那は神に祈らない。ほんのささいなことでさえも。
その影響か、いや、弊害と言った方が適当か。刹那は誰かになにかを頼ったり
頼んだり、願ったりということをしない。
いつもひとりでなんとかしようとする。それが、刹那にはどう考えても実行不可能
なことでも、だ。
なにかを欲することもない。そういったことを、刹那の口から聞いたことなど
ただの一度もない。欲がないのかと思ったくらいだ。
もっと誰かを頼っていいのに。
少しくらいなにかを願ってもいいのに。
「これが欲しい」とか、言ってもいいのに。
まだ、17歳なのに。
誰にも頼らず、願わず、欲することもしない。根のない柱のような刹那。
その姿が、いつも、悲しいと思った。

だから、教えたかった。
少しくらい、頼ったりしてもいいのだと。
頼って頼られて。頼んで頼まれて。
それで、いいんだと。

「違うよ、刹那」
ロックオンの手が刹那の頬を包み、そっと顔を上げさせる。
赤褐色の眼に飛び込んできたのは、いつもと違う優しい笑顔。
次の瞬間、刹那はロックオンにしっかりと抱き込まれた。
「な、なにを!」
わたわたと腕の中で両手を右往左往させる刹那にかまわず、ロックオンは
微笑を浮かべながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「祈るのは神様じゃなくて、ベガとアルタイル星…『オリヒメ』と『ヒコボシ』なんだと。
『アマノガワ』を挟んで別れ別れになった恋人…夫婦だったかな。そのふたりが
星の河を渡って一年に一度だけ逢える日、それが『タナバタ』」
それほど力は入っていないのに緩まない拘束を振り解くのを諦め、刹那は
しぶしぶそのままおとなしくなった。
「その…『オリヒメ』と『ヒコボシ』とやらが逢える日とそのふたりに祈ることと、
いったい何の関係がある」
おとなしくはなったが、刹那の機嫌は底辺をずるずると這っているらしい。
そのことに苦笑し、ロックオンはわずかに腕の力を強めた。
「“幸せのおすそ分け”、じゃねーのかな」
「おすそわけ…?」
隣人がたまに持ってくるあれか?
そうそう、それと似たようなもんかな。一年に一度だけ逢える幸せを、
願いを叶えることで空の下にいる俺たちにも分けてくれる。
そりゃ、すべての願いを聞けるわけじゃないけどさ、それでも、自分たちが
そうして出会えた幸せを、どんな形でもいい、誰かと分かち合いたいんだよ、たぶん。
「……幸せを、分かち合う…」
「ああ。空にいるふたりの幸せを、一緒に感じてみるのも悪くないんじゃないか?」
一年に何回かぐらい、こんな日があってもいいんだよ。
「………」
ロックオンに抱き込まれたまま、刹那は黙考した。すぐには理解できないことでも、
刹那はきちんと考えて自分なりに答えを出す。
そのまましばらく待った後、腕の中から小さく、すまない、と返答があった。
両腕でロックオンの胸を押し、刹那がゆっくりと離れる。
「言っていることは理解できたが、やはり俺には無理だ。いるかどうかもわからない
曖昧な存在に願うなど、俺には」
「じゃあ俺に願っちまえば?」
「は?」
遮ってきた言葉に少々抜けた声をあげ、刹那はロックオンを仰ぎ見る。
赤褐色の眼に飛び込んできたのは、いつもと同じひょうひょうとした笑顔。
「不確かな存在には願えなくても、確実にここに存在する俺になら大丈夫だろ?」
一瞬、どんな逆説だと突っ込みそうになった。
しかしロックオンのひょうひょうとした、それでいて優しくて、自信に満ちた眼
を見ていると、「それもそうかもしれない」と思えてくる。
そう思わせるだけの力が、あの翡翠色の双眸にはある。
刹那が俯き、再び沈黙が降る。数秒、十数秒、数十秒。
そして一分ほど経ったのち、顔を上げないまま、ぽつりと刹那がこぼした。
「…そんなものか?」
「そんなもんさ」
「……叶えてくれるのか?」
「努力はするぜ」
「………わかった」
差し出された青い紙とペンを受け取り、ダイニングに置かれたテーブル(以前ロックオンが
無理矢理設置した)に向かって、まるで戦闘でも行うかのような険しい顔で短冊と対峙する。
そんな様子に苦笑しながらロックオンもテーブルに向かい、ペンを走らせた。

『刹那がもっと俺にワガママ言えるようになりますように』

もっと甘えて欲しい。頼って欲しい。
そうさせるための努力を怠る気はないが、いつまでも頑なな彼を見ていれば、星に願いを
託したくもなるというものだ。
頼っていいんだ。甘えていいんだ。
よしっと満足そうにペンを置き、モスグリーンの短冊を裏返しにしてテーブルに伏せる。
さて。
「刹那、書けたか?」
ことり、とペンをテーブルに置いた刹那がロックオンを向き、書いたばかりの青い短冊を
無言で差し出した。ロックオンはしっかりとそれを受け取る。
刹那の初めての小さなワガママ。どんな無理難題でも、できることなら叶えてやりたい。
いや、必ず叶えてみせる。
そう決意を固め、ロックオンは託された願いに目を通した。
瞬間。
にこやかな表情のまま、ぴしっと音を立てて固まった。





『一度でいいから、この間テストしたアヴァランチエクシアを実戦投入して使いたい』





その後トレミーで、ヴェーダとイアンとスメラギに土下座するロックオンの姿があったとか。










あとがき
ごめんなさい、なんかニールが可哀想なことに…
刹那が書いた「アヴァランチエクシア」とは、一期、二期よりも未来の時間軸から過去のMSV
(モビルスーツバリエーション)を振り返る公式外伝「OOV」にて紹介された機体
「GN-001/hs-A01 ガンダムアヴァランチエクシア」のことを指します。
本編にこそ出てきませんでしたが、ガンダムエクシアに専用武装を装備させたもので
ずんぐり(がっしり?)した見た目とは裏腹に、高機動、高速移動を可能にした機体です。
設計はもちろんイアン。ちなみにデュナメスにも専用装備があり、こちらは水中狙撃型
「デュナメストルペード」。公式外伝OOFに登場済みです。詳しくはそちらを(笑)
前述したとおり残念ながら一期本編には出てきませんでしたが、実際に武力介入で
実戦投入された装備だそうです。たしか。
投入された裏には、ニールのなりふり構わぬ努力があったということで(笑)

2009/07/07 21:34 |おりだぶ小説COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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