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More More Happy Christmas!!-2312-

話とリンクさせ、予約投稿をしてみました。
別にしなくてもいいんですが…(苦笑)気にしないでやってください。ただの変なこだわりです。
さりげなくハロウィン小説とリンクさせています。
25日、クリスマス本番の今夜はライアニュです。少しでも甘く仕上がってたら、いい、な…( ̄▽ ̄;)
読んでみよう、という方は「続き」から。
それでは皆様。


 
メリークリスマース!!








約束をした。

音のない海底に降り積もる雪を眺めながら。

いつか二人で、家族に顔を見せに行って。

そしたら、雪を見に行こう。

あの街並みに降り積もる、真白き氷の結晶を。

故郷の雪を、見に行こう。




       【More More Happy Christmas!!-2312-】




ふわふわのスポンジ、たっぷりのチョコクリーム、大粒の栗。
手に持ったフォークで切り、ひとくち口に入れてかみしめる。
「……っ、うめえ…っ!」
翡翠色の瞳を潤ませながら、緑の制服を纏った男――ライル・ディランディは万感の思いを込めて、呟いた。


「何も泣かなくても…」
太平洋の真ん中の海底に潜伏中のトレミー、ここはライルの部屋。
部屋の主とともにベッドに腰掛けた操舵士兼医師のアニュー・リターナーは、涙をにじませながらひとくちひと
くちをかみしめる彼に戸惑いながらも苦笑する。しかし泣きたくもなるわけが、実はライルにはあるのだ。
思い起こせば約2ヶ月前、それはハロウィンの出来事。
せっかくアニューが「ふたりでハロウィンを祝いたいから」と作ってくれたパンプキンパイをミレイナに強奪され、
取り戻すこと叶わずにすべて食い尽くされたあの日。
あのあと地(床)に頭をこすりつけそうな勢いで落ち込んだライルを見かね、アニューは残ったかぼちゃを使って
もう一度パンプキンパイを作ると言ってくれた。ライルは、彼女の中に女神を見たと言う(本人談)。
だが、現実は残酷だった。
刹那とティエリアが買ってきて、半分しか使ってなかったかぼちゃ。その半分のかぼちゃはすべて、主に
作り主のストレス解消のために沙慈の手でかぼちゃプリンへと姿を変えた後だった。ライルは今度こそ頭から
床に沈んだ。
その後は特に機会もなく艦内の仕事の多さも相まって、今日、クリスマスイブを迎えてしまった。
しかし天はライルを見放さなかった。運良く、ここしばらくアニューと重ならなかった休憩時間が重なったのだ。
午後11時を過ぎての遅い休憩ではあるが、アロウズの襲撃回数はそろそろ20を超えるだろうここ最近は、
休憩時間をとれない日すらも出てきている。
そんな時に降ってきたこの時間。スメラギからのささやかなクリスマスプレゼントかとも思いながら、このまま
今日明日くらいは静かに過ごさせてくれと、顔もわからぬアロウズの指揮官に胸中で乞い願う。
そうして今、ようやく口にしたアニューお手製のケーキ、薪の形をしたブッシュ・ド・ノエル。中に栗が入った
それは甘すぎず苦すぎず、ライル好みの絶妙な味に仕上がっている。
恋人が丹精込めて作ったケーキ。食べれるはずが強奪され、あげくすべて食い尽くされた身としては、美味さ
も一入、泣きたくもなるというものだ。
うまいうまいとライルは食べ進める。そんなライルを、そんなにケーキ食べたかったの? とアニューは少し
不思議そうに彼の隣に座って首をかしげる。あくまで「アニューが作ったものが」というのには気づいていない。
しかし、こんなにも喜んでくれるなら作ったかいがあったと顔を綻ばせ、自分もここしばらくの会心の作を
ひとくち口にした。


「あー…アニューってさ、あんまりアクセサリーとかって付けないほうか?」
唐突に。
ぽつりと、ライルがそんなことを言った。彼のほうを見てみれば、視線はあさっての方向を向いている。
「えーっと…そう、ね。付けることは滅多にないわ」
「ああ、やっぱそうだよな…」
うーん、とひとつ唸った後、ライルは備え付けデスクにケーキ皿を置いて、引き出しからきれいにラッピングされ
た縦に長い箱を取り出して見せる。
「最後に刹那と買い出しに出た街で見つけてさ。よかったら」
少し照れくさそうに頬を赤らめながら、アニューに差し出した。
「30分くらい早いけど…俺からのクリスマスプレゼント」
「…いいの?」
「当然。その、気に入ってくれるかわかんねえんだけどな」
アニューがそっと差し出した両手に箱を移してやると、彼女はまじまじとそれを眺め、丁寧に封を解いていく。
顔を出した白い繊毛で覆われた縦長のケースの蓋を横に開き、アニューは目を瞠った。
中に収まっていたのは、銀色のネックレス。
「正直驚いたよ。天然物の水晶なんか、まだ現存してたんだな」
細い銀鎖の先には蕾、もしくは花びらをモチーフにしたらしい繊細な銀細工のフレーム。その中央にはライル
の言葉どおり、無色透明の水晶が揺れている。
アニューの小指の爪ほどの大きさの滴をかたどったその石は、今はもう枯渇したとも言われている貴重品だ。
300年ほど前までは割と親しみやすいほどに普及していたのだが、その後100年ほどして採掘量が減って
ゆき、今では人口石が一般的になっている。これほど透明度の高い、それも天然の石ともなれば、いったい
どれだけの価値があるのか。アニューには見当もつかなかった。
こんな高価なもの、と顔を上げて思わず口にしかけるが、それを遮る形でライルは言った。
ほら、アニューってさっき言った通りあんまりこういうの付けないだろ? だからひとつぐらい持っててもいいと
思ったんだ。いやあ、ほんとガンダムマイスターが高給取りでよかったよ。カード一括でって言ったら、店の人
すげえ驚いててさ。ああ、いや、つまりだな。
「その…似合いそう、だったから、さ」
またもあらぬ方向を見つつ頬を掻きながら、ライルはそう結んだ。
アニューは「高価なものを自分に」と気にしてしまっているが、ライル本人からすれば値段など瑣末な問題だ。
ただ、彼女に似合いそうだったから。喜んでほしかったから。だから贈ろうと決めたのだ。
それでもまだアニューは対処に困っている。しかしネックレスとライルを何度か交互に見比べ、少し心配そうに
口を開いた。
「本当に…いいの? すごく高価なものなんじゃないの?」
「いいんだって」
俺が惚れた女のために選んできたんだから。
そっぽを向いていたライルはようやくアニューをまっすぐに見、照れ隠しのような笑みを浮かべる。
もう一度、アニューは手の中の装飾品を見下ろす。やがてそれを膝に置き胸元のジッパーを少し開けたかと
思うと、手に取ったネックレスをおもむろに身に付けた。ライルの表情がぱっと明るくなる。
仄かに破顔してライルを見上げ、わずかに首を傾げて。
「…どう?」
「ああ…思ってた以上によく似合ってる」
返ってきた率直な言葉に、アニューはくすぐったそうに目を細めた。
正直なところ、「こんな高価なものを」と申し訳なく思う。しかし、それ以上に覚える感情は「嬉しさ」。
彼が、ライルが、自分のために――嬉しい。本当に嬉しい。
確かに多少の申し訳なさはある。しかし結局のところ、最終的な気持ちはそこへ落ち着くのだ。
「ありがとう、ライル」
首からさがるネックレスに手を置いて、アニューは花綻ぶような微笑みを浮かべた。
「大切にするわ」


ちらり、ちらり。視界の端をかすめる白い何か。
ふとそれに気づいたアニューは少し体を屈め、ライルの向こう、付けっぱなしになっている備え付けデスクの
モニターを覗きこんだ。
「…ライル、あれって…なにかしら?」
「ん?」
振り向いたライルの目に飛び込んできたのは、白い球状の物体。海底を映すモニターを上から下へと落ちて
いく、そのさまはまるで。
「雪…?」
どうして海底に雪が、と不思議そうに驚くアニューの呟きが聞こえた。ああ、そういえば彼女は宇宙生まれだ。
地球という惑星が抱く大自然の神秘など、今まで触れる機会もなかったのだろう。思えば海に潜ったどころか
間近で見たのも、アロウズの衛星兵器を破壊して地球に不時着してからのはずだ。
知識としてならこの現象は知ってる。雪じゃないよと、ライルはアニューに言った。
「こいつはマリンスノーって言うんだ。海中に漂ってるプランクトンの死骸やそれの分解中のものが、こんな
ふうに小さい塊になって海底に沈んでいく現象だ。できた塊が沈んでいく様子が雪に似てるから、「海の雪」
って名前が付いたんだよ。俺も、実際に見るのは初めてだけどな」
「プランクトン、なの?」
「ああ」
不思議ね、と呟くアニューの紅玉の瞳はモニターから外れない。知らない光景を知る楽しさに、彼女は胸を
躍らせていた。
「アニューは、本物の雪も見たことないか?」
「ええ。映像とかならあるんだけど…ずっと宇宙育ちだから」
いつか見てみたいわ。
それは、いつになるだろうか。このまま地上にいれば、運が良ければ見れるかもしれない。まだ見たことのない
景色に、アニューは思いをはせる。映像ではない雪景色は、どれほど美しいだろうか。
その時。それは本当に唐突に。
「じゃあ挨拶がてら、いつか行くか。アイルランド」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「―――え?」
「あー、でもいつになるかなあ」
とりあえずアロウズやらイノベイターやらを何とかしてからだよなあ。
天井を見上げながら眉間にしわを寄せてぶつぶつと何事かを呟くライルに、アニューは呆気にとられている。
そんな彼女の様子に気づき、ライルは体を少しアニューに向け直した。
「アイルランドって気候そのものはかなり穏やかで、雪が積もるなんて稀なんだけどな。それでもまったく
降らないってわけじゃないから。冬はそれなりに寒いし」
昔、それこそまだ寄宿舎に入る前、家族と暮らしてた頃。珍しい雪が降っては兄と妹と一緒になって、飽きも
せず曇天の空を、舞い降りる雪を眺めていた。
見せてやりたい。見てほしい。忘れられない、懐かしいあの光景を。
雪を見たことがないのなら、見に行こう。今は無理でも、いつか。
そう――ソレスタルビーイングの戦いが終わったら。自分たちがいらなくなったら、その時に。
「ふたりで行かないか? アイルランド。―――アニューのこと、俺の家族にもきちんと紹介したいし」
「私、を…?」
瞬きもせず、アニューはライルを見つめる。
聞き間違いでなければ、彼は言った。家族に紹介したいと。
故郷で眠る両親と妹と、4年前、宇宙に消えた双子の兄に。
それはつまり、遠まわしにそう言っているのだろうか。
「――どうだ?」
いつにもまして、ライルは真剣な表情を見せる。静かな、どこか緊張したような彼の問いに対する返答は。
ひとつ瞬きし、彼女は笑んだ。花開くように、光射すように。そんなもの――初めから、決まりきっている。
「見たいわ。あなたの故郷の雪」
とりあえず、今はこれだけ。でもきっと、彼には意味が通じるだろうと確信して。
ほっとしたように、ライルの頬が緩んだ。それから、本当に嬉しそうに笑って。
「ああ。必ず見せてやる」
「約束よ。必ず、アイルランドの雪を見せてね」




時計を確認したライルは、お、と声を上げた。
「日付変わったな」
時刻はグリニッジ標準時12月25日午前0時。キリスト教祖の生誕日――クリスマスだ。
「今日くらいは、敵さんも休んでてほしいもんだ」
ぼやくライルにアニューはくすくすと笑ってしまう。
ふと互いの視線が合う。
どちらからともなくひとつ笑んで、どちらからともなく唇が重なる。
離れて、そのままこつん、と、額を合わせた。


「「メリークリスマス」」






2009/12/25 00:00 |おりだぶ小説COMMENT(0)TRACKBACK(0)  

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